クビライの夢-1 | 歴史の散歩道

クビライの夢-1

 元・第五代カアン・クビライは、チンギスが結集させた草原の軍事力を支配の根源として保持しつつ、中華の経済力を管理し、ムスリムの商業力を再編成して、遊牧と農耕の世界を融合し、モンゴル世界連邦を創設した。 

              「大モンゴル国」

 西暦十三世紀のはじめ、のちにモンゴル高原とよばれる事になる大草原の東北隅に、ささやかな遊牧集団が急速に勢いをましつつあった。

 首領の名はテムジン

 1206年の春、テムジンはオノン河の上源に広がる美麗な草原で即位式をあげ、チンギス・カンと名乗った。

 そして新しい遊牧国家を「大モンゴル国」と名づけた。

 この新興国家の指導者は、つぎつぎと周辺地域に対する遠征を企画し、遊牧民を率いて外征の旅にでたのである。

 チンギスはモンゴルという遊牧民連合体の新興国家は、挙国一致の外征にうってでなければ、たちまちくずれかねない危うい存在であることをよく知っていた。

 北中国の金朝をはじめとする周辺国家は、モンゴル高原の遊牧民が統一される事をもっとも恐れ,遊牧民同士を敵対させる政策を、ながらくつづけてきていたからである。

 チンギスが高原統一に満足して、なにもしなければ離反や内応をするものすぐにでも出てくるだろう。

 チンギスにとっての対外戦争は、さまざまな遊牧民達を一つに結束させる一番手っ取り早い方法であったのである。

 かくして、かれらの旅は、世代を超えて数十年にわたってづづくことになった。
もともとは、雑多な人間の集まりに過ぎなかったこの政治・軍事集団は、こうした軍旅と拡大を通じて、互いに一体感で結ばれ、ともに自らを「モンゴル」だと認識するようになっていった。
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