クビライの夢ー7 | 歴史の散歩道

クビライの夢ー7

 元の第五代カアン・クビライは、チンギスが結集させた草原の軍事力を支配の根源として保持しつつ、中華の経済力を管理し、ムスリムの商業力を再編成して、遊牧と農耕の世界を融合し、モンゴル世界連邦を創設した。 

 大カアンの家系図。
初代チンギス・カン
二代オゴディ
三代グユク
四代モンケ
五代クビライ

                 クビライ政権の経営戦略

★短期間の間に広大な領地を拡大していった秘密は何であろうか?

 みじかい歳月で、モンゴルの驚くべき拡大・統治が達成された背景には、軍事とムスリム商人達の通商結合が濃厚にあった。

 もともと、モンゴル国家では、チンギス・カンが高原を統一する前から、その周辺にムスリム達、とりわけイラン系の商人達が出入りしていた
その後、モンゴルが対外戦争に打って出ると、彼ら中央アジア・イラン方面出身のムスリム達の活動は激しくなった。

 通商団の名のもとに、隊商をくんで敵地に赴き、内情調査・かく乱工作・調略活動を繰り広げた。
都市や国家・政権に対する降伏勧告や交渉調停の使節にも、たいていムスリムが加わっていた。
又、 モンゴルの軍事遠征の二つの特徴である、情報戦・補給戦のどちらにも、ムスリム勢力が大きな割合でかかわっていたのである。

 極端に言えば、モンゴルは、ムスリム商人たちを中心に用意されたルートを、ただひたすら進めばよかった。
つまり遠征の成功は、半ば保証されていたのである。

 さらに、ムスリムたちの能力が発揮されたのは、征服後の統治と運営においてであった。
とくに「大元」の富の源泉である徴税は、ほとんどひとえにムスリムたちにゆだねられた。
それはたいてい、「請負」のかたちでおこなわれた。

 ムスリム商人達は、自分たちの商圏の拡大とより大きな利潤のため、モンゴルの軍事力・政治力を利用したといえる。
モンゴルもまた、そうしたムスリム商人達の資本力・情報力・通商網を利用して、みずからの遠征と拡大を円滑にみちびいた。

 みじかい歳月で、モンゴルの驚くべき拡大による、世界帝国モンゴルの形成にとって、イラン系ムスリム商人達は、不可欠の要素であったのである。
"